引き続きアメリカではトヨタのリコール(回収・無償修理)をめぐる報道が盛んです。そんななか、経営学の父ピーター・ドラッカーの名を冠したドラッカースクール内でちょっとした話題になっているのが、イギリスのエコノミスト誌2月13日号に載った記事です。切り口はコーポレートガバナンス(企業統治)です。以下、一部を紹介しておきます。
「トヨタの取締役会は、外部の視点を取りこむメカニズムが欠けている点で衝撃的でさえある。29人の取締役は全員が日本人男性。しかも、全員が社内出身者であり、独立性のある取締役はゼロ(2007年にアメリカ現地法人のトップが初の外国人取締役に任命されたが、すぐにアメリカのライバル会社に引き抜かれた)。ソニーやイー・アクセスなど一部の例外を除けば、日本企業の大半で取締役会の多様性が欠如している。例えば、女性の取締役会への登用率で比べると、日本は(宗教上の理由で女性の社会進出が遅れるイスラム国家の)クウェートよりも劣っている」
そのうえで、次のように結論しています。
「社内文化に染まっていない外部の人材を登用するのは、違う価値観を取り込み、旧習から抜け出すうえで重要だ。もしトヨタがドイツの女性経営者やアメリカの元上院議員、香港の辣腕弁護士を取締役会に入れていたら、今回への危機の対応も違ったかもしれない」
海外ではトヨタは日本を代表するグローバル企業と見なされてきました。だからこそ、取締役会が「日本人、男性、プロパー」だけで構成されている状況が「え? 本当なの?」といった受け止め方につながるのでしょう。ちなみに、欧米のグローバル企業では取締役会の過半数が社外の人材で構成されているのが普通です。
小学2年生の長女Kは今、アメリカのロックやダンスミュージック(一部はブリティッシュロック)を片っ端から覚えています。以下、主な曲を挙げておきます。
・キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー(You Really Got Me)」
・ケイティ・ペリーの「ホット&コールド(Hot 'n Cold)」
・ピンクの「ソー・ホワット(So What)」
・デッド・オア・アライブの「ユー・スピン・ミー・ラウンド(You Spin Me Round)」
・シスター・スレッジの「ウィー・アー・ファミリー(We Are Family)」
・ビヨンセの「シングル・レディーズ(Single Ladies)」
Kはいずれの歌詞も完全に覚えており、そらで歌えます。なかでもお気に入りは「シングル・レディーズ」。この曲はグラミー賞を受賞し、「年間最優秀楽曲部門」に選ばれたばかりのダンスミュージック。非常にテンポが速く、難しい歌詞なのに、CDを聞きながらいつも熱唱しています。
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アメリカの議会ではきょう(2月24日)、トヨタの豊田章男社長が下院の公聴会に出席し、急加速問題を受けた大規模リコール(回収・無償修理)について説明します。最大の焦点は電子制御システムです。
日本にいると、なぜアメリカの議会が「フロアマット・ペダル原因説」に納得せず、「電子制御システム原因説」にこだわるのか分かりにくいのではないでしょうか。コンピューターがエンジンの回転数を制御する「電子スロットル(ETC)」システム導入後に、トヨタ車で苦情や事故件数が急激に増えている――このことがアメリカでは昨年秋から広く報道されているからです。感情的な「トヨタたたき」とは少し違います。
昨年11月29日付のロサンゼルス・タイムズが1面トップで掲載した記事「データが示すトヨタの急加速問題」の要点を紹介します。
1)スチールケーブルの代わりにセンサーやマイクロチップでエンジン出力を制御するETC導入が本格化した過去10年で、多くのトヨタ車とレクサス車で急加速の苦情が急増している。
2)高速道路交通安全局(NHTSA)に寄せられた苦情を数千件調べると、ETC導入後に一部のトヨタ車で「意図しない急加速」の苦情が5倍以上に増えている。
3)トヨタは2002年式の「レクサスES」と「カムリ」にETCを初めて導入。2002-04年式の両モデルでは急加速の苦情が平均で年132件に達し、1999-01年式の年26件から急増している。
4)トヨタのピックアップトラック「タコマ」では2005年にETCが導入され、その後3年間で急加速の苦情件数は平均で20倍以上に増えている。ハイブリッド車のプリウスでも同様の傾向が読み取れる。
5)2002年式モデルの登場後、トヨタ車をめぐっては急加速を原因にした死亡事故が少なくとも19件発生。NHTSAによれば、同じ期間に急加速を原因にした死亡事故は、トヨタを除く全自動車メーカーを合計しても11件にとどまる。
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企業が危機に対処する方法はそれほど難しくはない--。
きょう(2月11日付)のロサンゼルス・タイムズ紙で、同紙コラムニストのデビッド・ラザラス記者はこう書いています。ブレーキの不具合で車が急加速するため、数百万台規模のリコール(回収・無償修理)を強いられるという危機であっても(つまりトヨタ自動車が現在遭遇している危機であっても)、対処法はいたって単純だと指摘しています。
「分かった事については分かった時点でただちに顧客に包み隠さず伝える。これを肝に銘じておくだけ。分からない事については正直に『分からない』と言う。事実をゆがめて伝えたり、悪い情報を隠したりしているという印象を世間に与えたら、取り返しがつかなくなる」
その点でトヨタの対応はお粗末でした。昨年8月にレクサスを運転していた警察官が暴走し、一家4人が死亡する事故が起きていたというのに、最初はブレーキの不具合を認めませんでした。ロサンゼルス・タイムズに「電子制御システムに不具合の可能性」と指摘されると、「電子制御システムに問題はない」と完全否定しました。
ラザラス記者はこう結論しています。「トヨタは最初に否定し、次にあいまいになり、最後になって渋々と問題の存在を認めた。これでは『顧客第一』はかけ声倒れで、実態は『会社第一、顧客は後回し』と言われても仕方がない」。
参考になるのが、1982年に起きた「タイラノール事件」です。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、鎮痛剤「タイラノール」をめぐって毒物購入疑惑が広がると、ただちに全商品の回収に走りました。事実確認を終える前に、です。「顧客第一」を実践して、逆に会社の評判を高めました。
南カリフォルニアをカバーするロサンゼルス・タイムズは、わたしの愛読誌です。編集スタッフがかつての1100人から600人以下へ大幅削減されたにもかかわらず、トヨタ問題では圧倒的な強さを見せています。昨年10月以降、徹底的な調査報道でトヨタ問題を何度も大きく報じています。単なる「ハリウッドの娯楽ニュースをカバーする新聞」ではないのです。
写真は、昨年11月29日付のロサンゼルス・タイムズです。1面トップ扱いで「トヨタはフロアマットが問題と主張。しかし、急加速の事例は電子制御システムへ移行後に急増している」と伝えています。同じ時期、これに匹敵する調査報道を手掛けている新聞はありませんでした。朝刊1面トップでトヨタ問題を報じる日本の大新聞もありませんでした。
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